天使なんかじゃない 完全版 第一巻 |
できたばかりの私立高校で繰り広げられる、底抜けに明るい女子学生・翠と、元不良だけど今ではリーダーシップを発揮して人を引っ張っていく晃の、学園ラブコメ少女漫画。
作者は今では多分大物の矢沢あい。集英社の主に小中学生あたりに読者層を持つ「りぼん」に連載されていたもの。私が買ってここで取り上げるのは、通常の単行本ではなく愛蔵版みたいなもの。全四巻らしいが、今日行きつけの本屋に行って在庫まで確認してもらったのに二巻が置いてなかったので、一巻だけレビューすることにする。
いい話だと思う。あまり分析するとつまらなくなる。でも分析せずにはいられない。身もふたもない話なので、興をそがれるのが嫌ならば飛ばして欲しい。
キャラクターが少女漫画の王道。底抜けに明るい主人公が、不良っぽい男の子に惚れる。でも男の子はこの作品ではもう不良じゃない。リーゼントでバイク乗ってて、性格も奔放なんだけど、あとは品行方正。性格に欠点はいまのところ見つからない。一体どういう人物設定なのだろう。単に読者の好きな男の子像をちりばめただけならむなしいが、多分読者は結構満足したと思う。例によって家庭環境が複雑だったり。
あからさまな色男と美人も出てくる。うまいのは、この美人の麻宮裕子が、いつもはすましていて冷たいぐらいなのに、色男・瀧川の前では紅潮したりして少女少女してるとこ。この二人の話もところどころに出てきていい感じ。
話の展開も実に見事。円熟している。上級生のいない新しい学校で、生徒会が作られ、選挙で役員を選び、文化祭を準備し、勉強、家族、接近、新入生歓迎会まで、流れるように話が進んでいく。
まあ気になったのは、愛の障壁の出し方がちょっと露骨。ヒロコとは誰なのかでだいぶ引っ張られたが、読んでいる私は別にハラハラドキドキはしなかった。読む人間が悪かったか。
とても完成度の高い作品なのに、それほどまでに熱中できないのはなぜだろう。多分一番の理由は、読んでいる私が主人公に恋心を抱くことができないからだろう。とても明るくて、なんでも挑戦する、元気がよくて、みんなから好かれていて、時には悩んで、くるくる表情が変わり、魅力的な要素はいくらでもある。でも、私は、好きにはなれても恋心はちょっと…。いや、うーん、男が少女漫画を読むから悪いんであって、少女漫画の主人公ってのは読者が自分自身を投影するためのよりしろの役割さえ果たせばいいものなのかもしれない。でも、私がこれまで読んできた作品の中で、結構好きになれる主人公がいたのだが…。単にぶりっ子が嫌いなだけなのか。むしろ、リーゼントはヘンだが晃の方がいいかも。誰もが幸せになれるわけじゃないんだ、みたいな想いで浮かない顔をしているカットが二三枚あるだけでこうも良く見える。
この作品は、とても良い作品だと思うが、ありきたりな少女漫画の域は出ていない。いやまだ第一巻しか読んでいないので、今後嵐のような展開が…あるかどうかは知らない。
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