ダーウィン事変 9巻まで |
人間が家畜を食べたり動物を好き勝手に扱ったりするのは間違っていると訴える過激派団体が、動物実験により生まれた人間とチンパンジーのあいのこチャーリーに目をつけて次々と事件を起こし、両者の行動が人々の意識を揺さぶっていく。青年マンガ。
2022年になにかのマンガ大賞を受賞するなどマンガ好きには広く知られた作品だったので、おそまきながら自分も読んでみた。おもしろかったけど、ちょっと引っかかる点もあった。
まずどういう作品かというと、ALAという動物解放同盟を名乗る過激派団体が、人間とチンパンジーのあいのこであるチャーリーを自分たちのリーダーにしようと彼やその周りの人々に襲い掛かってくる。作中なんだかんだでずっと戦いの描写が続く。アクション中心の作品だと思う。チャーリー自身も戦うのだけど、チンパンジーの血を引いているせいかとても強い。
過激派団体の主張は、人間に人権があるように、動物にだって同様の権利があるんだということ。このあたりはもっと細かく説明したいところなんだけど、それ自体がこの作品の内容になっているのであまり紹介しないほうがいいと思う。実際に読んでみて楽しむのが一番なんじゃないだろうか。
次にアメリカを舞台にしていること。名前からして日本人の作者が、少なくとも自分の目から見てとてもリアルにアメリカ社会を描いているように見えた。セリフにも英語のルビを振っていたり、冗談や語呂合わせにも英語圏の文化を使っている。いかにもアメリカの映画やテレビドラマに出てきそうな登場人物がいっぱい出てくる。あっちの人が読んだらどう思うんだろう、ということを読んでいてずっと考えていた。アニメ化されたときに字幕が違ってたらウケるw
チャーリーは高校に通いだす。頭が良くて温厚なチャーリーは、人々の好奇と悪意の視線を気にせず、淡々としている。入学早々、人助けをしてルーシーという女の子と仲良くなる。彼女は頭がよくて変わり者で陰キャだった。彼女は母親が精子の提供を受けて生まれた試験管ベイビーだった。こっちのほうも掘り下げてくるのかとおもったらいまのところ大した話はなかった。
あとはもう紹介すべきこともないのでぜひ読んでみて欲しい。
自分がまず気になったのは、あまり日本人向けの作品ではないなということ。この作品が突きつけてくることって正直あんまり日本人には刺さらないと思う。そりゃ人間は勝手な生き物に決まっている。人間が万物の霊長であると考えているのってキリスト教というか一神教の人たちだと思う。
次にそんな彼らですら犬や猫やクジラやイルカといった知能を持っているっぽい生き物に対しては半分自分たちの仲間だと考えているのだということ。作中、過激派団体が人間を牛のように屠殺する事件が起きるのだけど、牛と猿とでは扱いが違うはず。
日本にも世界をリードする京大の霊長類研究所があるのになぜアメリカを舞台にしたのだろう。…と思ったら不正経理事件がもとで解体されていたw ともかくこういう倫理に引っかかるようなことは欧米では一番ありえないと思う。一番起きそうなのはまず中国だし、日本も少なくとも宗教的な歯止めが無い分起こりえると思う。
まず日本の読者に届ける作品なのに、なぜ日本人があまりピンとこないアメリカの人々に語らせようとしたのだろう。このあたり、村上春樹のようなイケすかなさを感じる。ちょっとステレオタイプだし、薄っぺらさも感じてしまう。正直自分は登場人物にそれほど魅力を感じなかった。
チャーリーの主張がとてもかっこよかった。民衆の凝り固まった考え方に対して、過激派団体やリベラルな人たちが様々な意見を述べるのだけど、それに対するチャーリーの言葉が本当にクールで目の覚めるものばかりだった。こうしていろんな考え方を織り交ぜて描いてみせる作者はきっと頭のいい人なんだと思った。
2026年にアニメ化されるらしい。すでにフランスでも賞を取っているみたいなのだけど、本格的に世界に知られるようになるのはこれからだと思う。そうなったときに世界の人々がどのような感想を抱くのかいまからとても楽しみではある。
一話を無料で配布していてなかなか無い試みでいいと思う。でも一話だけじゃ…。長編作品なんだから一巻分あるいはその半分ぐらいタダで配ってもいいんじゃないかと思う。と思って改めて一話だけざっと見返してみたら、割と一通りの描写が詰まっていたのでこれで十分なのかもしれない。
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