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戦後生まれがアメリカに受けた屈辱
筆者が子供の頃に飲まされていた脱脂粉乳とはアメリカから輸入されてきたもので、アメリカでは家畜のエサにしかならないようなものだった、という話を中心としたアメリカの食料政策について。

脱脂粉乳が普通の飲み物ではないことはこれまでにも分かっていたのだが、著者が自身の体験談を絵と共に感覚的に描いたこの話を読んで、初めてこの脱脂粉乳というものについて理解できた。豚が飼料を食べている絵と、日本の子供たちが脱脂粉乳を飲んでいる絵を、縦に並べて描いているのだ。

話は小麦につながっていく。アメリカは戦中や終戦直後に小麦を大増産して世界各国に輸出して食糧問題に大きく貢献すると共に儲けていたのだが、戦後しばらくして各国が復興してくると小麦が余るようになったらしい。そこでなんと、日本人の伝統的な主食をパンに変えてしまったというのだ。それにより日本人が小麦を輸入するようになり、アメリカの小麦の余剰在庫が片付き、今後も日本がアメリカから小麦を輸入するようになった。

アメリカが作った「農業貿易促進援助法」が通称として「余剰農産物処理法」と呼ばれ、この法律の成立直後に日本で「学校給食法」が作られ、「完全給食とは給食内容がパン(これに順ずる小麦粉食品等を含む)ミルク及びおかずである給食をいう」と明記されたというのだ。それにあわせて、日本で権威のある学者が、米を食べるとバカになるだとか短命になるだとか言いはじめ、さかんにパン食を進めたらしい。

私は主食としてのパンはあまり好きではない。あの食パンというものは、つい最近までは人間が好んで食べるべきものではないとさえ思っていた。食パンを焼いてバターをぬって食べる朝食というのは本当に不愉快で、ゴハンがないときだけ嫌々食べていた。あんなに喉が詰まる非人間的な食べ物を、よくまあ好んで食べる人が多いものだと、牛乳やコーヒーで喉に流し込みながら思っていた。だから余計に腹がたつ。

ただし、同じ小麦を使う麺類は別である。ラーメンを嫌いだという人はあまりいないだろう。麺類というのは製造が難しく、おなじみ中華料理のほかに、フランス料理のもととなったイタリア料理、この二つの食文化が世界で唯一のものである。あとはこねてパンにして食べていた。菓子パンはともかく、日本人は食パンを食べることなんてなかった。

また、友人の話によると、小麦よりも米の方が多くの人口をやしなえるらしい。つまり、穀物としての優劣をつけるとすれば、小麦よりも米の方が優れているのだ。

話を戻すと、アメリカが日本に小麦をおしつけたような食料政策は、過去のことなのではなく、現在でも続いているのだという。クジラがそうで、クジラの次はマグロだとも言っている。マグロを知的生命体だと主張するのは無理だろうから、さてどういう戦略でくるのかは分からないが、ありうる話である。現に魚をここまで食べるのは日本人ぐらいなのだから、今度は代わりに牛肉を食えと言ってくるのではないか。

ただ、クジラはもういまの日本人はほとんど食べていないし、概してあまりおいしいものではないそうだから、そこまで心配すべきことなのかどうかは疑問がつく。アメリカがクジラを獲るなと言い出したのは、ベトナム戦争の失敗を隠すために他の問題を作り出そうとした一環であるとの話を聞いたのだが、こちらの方が運動の性格から考えても説明がつきやすい。

最後に薬害エイズについても言及している。日本に輸入されてエイズになって大問題となった血液製剤も、アメリカ国内では使えなくなったものを日本に輸出したというのだ。いや、日本がすすんで輸入したのだとも言える。イギリスの狂牛病騒ぎの肉骨粉も、国内やヨーロッパに輸出できなくなったものを日本に直接あるいは第三国経由で輸出したものだし、というか日本の政府と業者がすすんでイギリスから輸入したと言われている。日本の政府と生産者も信用できたものではない。

アメリカなどが日本人を家畜扱いだとか非人間的に扱ったとかいう表現は実際のところ実情とはかけ離れていると思う。しかし、困った生産者や流通者が、相手にシンパシーを感じずにあるいは見て見ぬふりをして、日本に押し付けたことは確かである。それを指して、家畜扱いだと言って強く抗議するのは、とても良いやりかただと思う。
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