ぐらんぶる 12巻まで |
北原伊織は海の近くにある工科系大学に進学したが、実家から離れているのでおじが経営しているダイビングショップ「ぐらんぶる」に居候する。そこには幼馴染の女の子の古手川千紗とその姉の奈々華がいて、久しぶりの再会で急接近するかと思いきや、裸の男たちによるハードな飲み会の日々に巻き込まれるのだった。少年マンガ。
前に読んで面白かったライトノベル「バカとテストと召喚獣」の作者である井上堅二がこの作品の原作をしていて、テレビCMでやっていたので前から知っていたのだけど、とにかく男くさい話みたいだったのでそんなに興味を惹かれないまま時間がたち、ようやく2018年秋にアニメ化されたのを見たらそこそこ面白かったのでようやく原作マンガに手が出た。わりと面白かった。
うわばみな先輩たちにとにかく飲まされ続ける主人公というのがこの作品の基本的な流れなので、あの手この手でしつこくアルコールネタが続くのだけど、そこに至る流れが色々あって飽きない。水に見せかけてスピリッツ(度数97)だとか、アルコールが揮発して湯気が立ってるだとかのパターンは繰り返されるのだけど、そのたびに笑いがこみあげてくる。同じ新入生同士で互いにハメあおうとするところなんか「バカテス」のノリだなと思った。
原作の井上堅二によるスピード感あるコメディ小説のノリはもともとマンガ的だなあと思っていた。作画の吉岡公威という人のことはよく分からないけれど、このノリがビシッとマンガに表現されていておもしろい。この人の絵は、特にザマァ顔にすごく力があってよかった。ちょっと絵のバランスが悪いのが気になるけれど勢いで読める。それでいて色んなタイプの女の子がどれもみんなかわいい。
大学というかインカレ(大学間)のダイビングサークルが舞台になっていて、飲んでばかりじゃなくてちゃんとダイビングについて学んだり実際に潜ったりするほかに、潜るための機材や旅費なんかを稼ぐためにアルバイトをしたり、仲の悪いテニスサークルと対決したりする。
金髪イケメンの今村耕平は外見とは逆にアニメオタクで、「魔法少女ららこ」やその声優の水樹カヤが大好き。オタクネタも割と頻繁に出てきておもしろい。こいつはもともとダイビングには興味なかったが、伊織の策略によりサークルに拉致されてから楽しさに目覚めた。でもサークルの酒乱ノリにはついていけない。
サークルは基本的に男ばかりなのだけど女の子もいる。工科系大学の数少ない女子である従姉妹の古手川千沙は、とにかくダイビングが大好きでダイビングに絡めば男の子たちともニコニコと楽しそうに話をするのだけど、普段はめっちゃクールでいつも醒めた目で酔っ払いどもを見ていて、主人公の伊織は初動を間違えたばかりにゴミを見るような目で見られ続けている。
近くにある女子大から参加している浜岡梓は、男たちの中で雑魚寝が平気なほどおおらかなタイプのお姉さんで、主人公の伊織のことをたまにからかったり暖かい目で見たりする。こいつは実はバイつまり男も女も好きで、古手川千沙の姉である奈々華のことを実は狙っている。そのせいか伊織のこともバイだと思っていて、しかも金髪イケメンアニオタ耕平のことを狙っていると勘違いしていて、すれちがいのギャグで笑わせてくれる。
ほかに伊織や耕平の同級生で四人組の男たちが大学にいて、モテない同志として結束しているが、たまに抜け駆けしようとする者がいると容赦なく牙をむく。
吉原愛菜は九州の田舎から出てきた女の子で、近所の女子大に通いながらインカレのテニスサークルに入っていたが、垢抜けない様をいじられてハブられていた。それを伊織と耕平の二人が胸のすくやりとりで仕返しをしてやったことからダイビングサークルに移籍してくる。この作品はなんだかんだで恋愛要素がほとんどないのだけど、こいつだけは主人公のことが好きで、つたないながらもときどきアプローチを掛けるがいつも失敗する。
この作品の正ヒロインは主人公の幼馴染の古手川千沙なのかと思っていたのだけど、既刊12巻まで読んでみてもまったく進展がない。伊織たちが愛菜を助けたことが気に食わなかったのか、伊織の同級生たちを嫉妬させる目的で伊織とは付き合っていると公言しておとしめようとする。この微妙な感情表現は「バカテス」で見せた井上堅二らしい部分だなあと思った。正直自分はちょっと意味不明だと思うけれど、色々想像できる人なら楽しめるんだと思う。
途中で伊織の妹が登場する。ブラコンなのかそうじゃないのか、絶妙なバランスなのか意味不明なのかこれまた感想が分かれそう。アニオタ耕平が妹大好きで嫉妬してくるのがウケる。
ギャグマンガとしてとても面白くて何度か声に出して笑ったのだけど、ラブコメのようでいてそうは思えない感じが自分にはちょっと欲求不満だった。スカッとした明快なギャグマンガにちょっと女の子が絡んでくる感じで良ければ楽しめると思う。あ、裸ネタとアルコールネタがクスリとも笑えない人はやめたほうがいい。分かりやすい笑いなので嫌いな人はそんなにいないと思うけど。
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