Signature MASTER MkII |
ドイツの音響機器メーカーULTRASONEが出しているヘッドホンSignatureシリーズの最上位機種MASTERの二代目。同シリーズは実質ミドルレンジに位置づけられ、独特の響きを持つ同社の技術S-LOGICによる存在感ある高域を、このMASTERではハイエンドモデルに匹敵する高性能ドライバーに搭載しているのが特徴。
自分が外出時に愛用中のbeyerdynamic Aventho Wiredというオンイヤー型ポータブルヘッドホンがだんだんボロくなってきたので(イヤーパッドは一度交換済みだけどヘッドパッドまで劣化が進行中)、代わりのモデルを物色していたらちょうど代理店アユートが直営ネット通販サイトで投げ売りしていたので買ってみた。正直ちょっと想定と違っていた。
数年前にこいつの実質的な前々モデルであるSignature Proを音響機器専門店フジヤエービック主催のヘッドホン祭にて試聴したとき、ULTRASONEのS-LOGIC搭載機種にありがちなクセがなくて自然な響きだったことに驚いた記憶があった。なのでこいつにもそれを期待していたのだけど、聞いてみたらしっかりクセがあった。高域にちょっと硬くて突っ張った響きがある。
自分は同社のPRO 900という重低音番長なモデルを持っていて、S-LOGICの音は十分知っていたしソースによってはアリだと思っていたのだけど、今回それを期待していたわけではなかった。
あらためてS-LOGICについての説明文を読むと、ドライバーユニットの振動版の中心部は音が正確なのでそのまま耳に届け、外周部はおそらくコーン紙がたわんで特に中高域が少し歪むので、それを遮蔽することによって指向性の低い低域だけを外縁部の穴から出すみたいな感じだと思う。
ダイナミック型ヘッドホンの宿命として、4cm前後の大きなドライバーユニット一発で音を出すとイヤホンに比べて低音は出るんだけど、高音はどうしても歪んでしまう。これをどう緩和するかが各社各様あって、普通の安いヘッドホンなんかだと素材が悪いので単純に高域が出なかったり、高級なモデルだとコーンの素材をできるだけ軽くて固いものにしたり、ハウジングによって響き方を調整したりする。
ULTRASONEのS-LOGICはいわば曲芸的なやり方をとっているのでどうしても音にクセが出てしまうのだけど、その分独特の生々しさもあるし、駆動するのに特別高いパワーを必要とするわけでもない。
じゃあ実際どうだったかというと、先日買ったshanlingのH2という安いヘッドホンアンプで聴いてみてもそれなりの音で鳴ってくれたし、繊細な音を鳴らすRME Fireface UCという高価なアンプでも割ときめ細かく鳴ってくれたんだけど、ifi audioのiDSD micro Diabloというハイパワーなアンプだと思ったほど気持ちよく鳴ってくれなかった。一番期待していたbeyerdynamic Aventho Wiredの代わりにするという目的にはちょっとそぐわないと思った。ハイパワーで力強く鳴らしてくれるアンプには曲芸ではなくて直球で応えるヘッドホンが一番だったと思う。
ドライバーのスペック自体はハイエンドに迫るぐらい高いと思う。実際いい音で鳴っている。Aventhoよりも総合的なスペックでは勝っているんじゃないだろうか。でもいざ外出しようとするとAventhoを選んでしまう。
ところでこんなに名機なAventhoに直系の後継モデルも上位モデルもなく、ただ名前を継承しただけのBluetoothヘッドホンしか出ていないのは意味不明すぎる。少なくともAventhoの名を継がせることなんてなかったと思う。まあもともとWiredのほうが特殊なモデルだったのかもしれないんだけど。T51pとかDT1350とかの後継機も出ないんだろうか。
音以外の造りも、とてもよくできていると思う。専用のセミハードケースに入れるときはイヤー部分を回転させて全体を薄く変形させられるほか、イヤー部分を向かい合わせたまま内側に折りたたむこともできる。イヤーパッドは合成皮革ではなくシープスキン(羊革)を使った本革だし、ヘッドパッドの外側も同様に本革なのに対して、内側はメッシュ地なので実用性と耐久性を備えていそう。まあ耐久性に関しては数年使ってみないと分からないけど。
ケーブルが三種類ついてくる。標準ステレオプラグ、ステレオミニプラグ、そして4.4mmのバランスプラグ。それはいいんだけど、ヘッドホン側が専用の形状なので純正のケーブル以外に選択肢がない。Hifimanやbeyerdynamicなどで使える事実上の標準となっている3.5mm slim body doubleにしてほしかった。とりまわしもいいし不満もないんだけど。
自分は税込み62,370円で買ったけど、これより高かったらちょっと後悔というか期待と違っていたことに引っ掛かりを感じていたと思う。いま見たらクーポン込みで六万以下まで下がっていた。こういうヘッドホンが欲しいという人には間違いなくお買い得だと思う。あくまで原音にこだわっている人は絶対に避けたほうがいいけど、心地よい音を求めている人、常に高音質なソースを聴くわけではない人、ハイパワーなアンプを持っていない人、外出時に気持ちよく聴きたい人なんかにはハマる可能性が高いと思う。
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