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AKIRA (映画版)
第三次世界大戦で荒廃し復興しつつある仮想未来の東京で、落ちこぼれの学生たちが吹きだまる職業訓練校の少年たちはバイクを乗り回してはケンカばかりしていた。ある日彼らは、反政府組織が連れ出した奇妙な少年とそれを追う軍の追跡劇に巻き込まれ、鉄雄がバイクで事故を起こしてしまう。軍の病院に搬送された鉄雄は超能力に目覚め、幼い頃から兄貴分だった金田を見返そうとして暴走する。その超能力は、先の大戦で極秘扱いとなっていたアキラがかつて発現させた力だった。

日本だけでなく世界的にヒットし、特に構図が名のある監督たちに強い影響を与えた作品。まず原作マンガがあって私はそっちは読んでいたが、映画版のほうは見た記憶がなかったので今回見てみた。ひょっとしたらずっと昔に見ていたかも。

80年代に作られただけあって、いま見ると多少古さを感じさせるが、思っていたほど古くさくなくて少し驚いた。それでもさすがに描き割りの絵と人物のタッチは時代遅れになってしまったように思った。

この作品のテーマはなんなのだろう。主人公たちに焦点を当ててみると、いつも金田に守られ弟分だった鉄雄が、心の奥で持っていた強烈な負けん気、それでも金田のことを頼りにして慕っていた鉄雄と金田の友情の形を描いたのだろうか。

結末だけ見ると、アキラの持っていた超能力をそのうち全人類が持つことになるという謎のメッセージで作品が締められるのだが、何を言いたいのかよく分からなかった。作品の生まれた時代を考えると、まだアメリカとソビエトが冷戦だった頃、核戦争と地球の滅亡の危機があったので、強力な力を持った人類が力を制御していかなければならないことを言っているのだろうか。あるいは子供同士のケンカが次第にエスカレートして殺し合いに発展しかねない危うさを描いたのか。まとめると、力は加減しないとダメなんだよ、と言いたいのだろうかw

日本が評議会のようなものを最高意志決定機関として治められて政治的な力学っぽいものが描かれていたり、軍が非常手段としてクーデターを起こすだとか、世紀末的に人々が宗教をあてにするみたいな描写が印象的だった。

女の描写が独特で面白かった。金田が惹かれる反政府組織の女ケイは、肩幅があってゴツめの活動的な女。大友克洋の描く人物は表情がどれも文字通り渋くて、いま見るとちょっと笑ってしまった。鉄雄の彼女は気弱で、対立する暴走族(?)にバイクからラリアットされたり、シャツを破かれてこりゃ犯されるのかと思ったら顔面に拳を受けて倒されて鼻血を出したりと、すがすがしいまでに暴力の対象となっている。この男女平等さは結構すごいと思う。

グロ描写がポツポツあってびっくりした。いきなり人間が強力な力で引き裂かれて潰されたり、終盤に鉄雄が自分の体を制御できなくなって膨張したりする。私の感覚で言えば、ギリギリ不快感を感じないレベルに収まっているが、人によっては結構危ないと思う。

人声コーラスが使われる前衛的なサウンドトラックは、退廃したアジア的な都市というイメージによく合っていた。猫ひろしで耳慣れた青森ねぶた(?)の「ラッセラー」みたいなコーラスとかが、もはや従来のコーラスの概念から逸脱したようなまるで吐き捨てるような出し方の声もあって印象的だった。もうちょっと突き抜けて欲しいとも思ったけど。

この作品は名作と言われているのでこれまでに色々な作品に影響を与えている。だからそういう影響を受けた作品を知らず知らず沢山見たあとでこの作品を見ると、あんまり目新しさを感じることが出来ないように思う。私も多分そんな一人なので、そんなに言われるほど良い作品とは思えなかった。それでも、後発の作品群がマネしようと思ってもマネできなかった部分が所々あるように感じた。
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