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つぐもも 23巻まで

浜口よしかづ (双葉社 アクションコミックス)

まあまあ(10点)
2020年5月23日
ひっちぃ

幼い頃に母を亡くした中学生男子の加賀見一也は、形見の帯をいつも持ち歩き何か嫌なことがあればその香りを嗅いで気分を落ち着けていた。あるとき彼は学校で謎の妖怪(?)に襲われるが、どこからともなく現れた着物姿の女の子に助けられる。桐葉と名乗ったその女の子は帯の付喪神(精)なのだった。見かけによらず気の強い少女に一也は振り回されるようになる。ちょいエロ和風ファンタジーマンガ。

アニメの二期が始まったので一期の話を思い出すためにこの原作に手を出してみた。多少思うところはあったけれどそれなりに楽しめた。少年マンガ的には多分アウトだけど青年マンガ的にはそこまでじゃないラインのエロさをウリにしていると思う。

ヒロインの桐葉は帯の付喪神(つくもがみ)つまりモノに魂が宿った精霊みたいな存在なのだけど、そのなかでも人間に長いこと愛用されて生まれた「つぐもも」だという設定になっている。一方で人間の負の感情から短期間で魂を持つようになった付喪神のことを「あまそぎ」と呼び、放っておくと人に迷惑を掛けるので退治すべき存在として出現する。

人間の負の感情を扱っているので毎回人情ものの話になるかと思いきや、お涙頂戴の重い話はそれほどなくて多くは人の勝手な妄想を面白おかしく扱っている。「あまそぎ」は作り出した人が自ら破壊しなければ呪いが自分に跳ね返ってくるという設定なので、ただ単純に戦闘で敵をぶっ倒しておわりみたいな安易な展開にはなっていない。

主人公の一也には幼馴染の委員長である千里がいて作品の冒頭からちょっと思わせぶりなシーンがあるのだけど、作品全体を通じて恋愛関係とは程遠かった。一也にとってのヒロインはあくまで桐葉だけみたいなのだけど、どちらかというと彼女は大切な存在として扱われており、恋愛関係かと言われるとちょっと違う感じがする。この作品がラブコメなのかどうか分からないけれど、設定的にはなんか甘いように思う。

ハーレムものになっており、桐葉だけでなく女の子が次々と一也のハーレムに加わっていく。町の土地神まで幼女のなりで参入する(桐葉と仲が悪いのがウケる)。土地神の巫女(助手)である無口で大食な巨乳の黒曜や(不気味な上に下品な感じがして好きになれなかった)、一也と同じ「すそはらい」(あまそぎ退治役)の皇すなお(ツンデレ)、桐葉以外の「つぐもも」でサブヒロイン格の響華(ツンデレその2)なんかがいる。ほかに隣町の土地神とか近所に住む金貸しの祭神(女だけど女児大好きな商売人)とか特殊能力を持った枕の「つぐもも」(不思議ちゃん)などが都度登場する。大体肌を露出する。

絵がうまい。最初の方はちょっと古くて雑な感じもしたけれど、見やすくて肉感的(というかちょっと筋ばった感じ)でエロい。様々なタイプの魅力的な女性キャラだけでなく、男性キャラも若者からじじいまで多彩に出てくる。戦闘シーンは分かりやすく、帯を使って戦うときにちゃんと物理的に編んで盾にしたり円錐形にして攻撃したりと説得力がある。怪物の絵もスケール感があって迫ってくる(この人は空間描写が特にうまいと思う)。

一也が一時的に桐葉の代わりにパートナーにする笛の「つぐもも」の響華がグッときた。姿形や揺れる心の描写がとても魅力的だった。

「すそはらい」仲間となる皇すなおの最初の逆恨みが意味不明だったので最初にアレッと思った。それから、主人公の一也の亡き母親の話が回想編として割と長く描かれるのだけど、こいつがなぜか戦闘狂という突飛な設定のためあまり話に入っていけなかった。この先きっと作品が大して面白くならないだろうなと思って見切りをつけたかもしれないぐらいおかしく感じた。

敵対勢力として登場する「迷い家」の話は人間に好き勝手に使役されていた「つぐもも」たちが反乱を起こした話で割と良かったけれど、話の畳みかたがなんかあっさりしていてちょっと拍子抜けした。「すすはらい」養成所の「つづら殿」の話は派閥争いが面白かったけれど、最後は武道会になって盛り上がったもののそんなに面白く感じられない戦闘が長く続いたのでちょっと退屈になった。

作者があとがきで、真面目な展開のときは我慢するけどエロ描きたかったから隙間隙間で趣味に走ることができて本望でしたみたいに書いていて、非常にあけすけなのは一応好感が持てたけれど、やっぱりご都合主義で無理にエロに走っているようなエピソードが多くて引いた。この作品のエロはただ単純に肌が露出してイヤーンなだけでなく(それだけだったらまあ様式美ということでそれほど気にならなかったかもしれない)、おもいっきりスキンシップやBまでやってしまうので、ちゃんと理由がないとアホみたいに思えてしまう。身動きできないほど疲れたなら風呂一日ぐらい入らなくてもいいだろみたいな。自分が一番いいなと思ったのは、主人公が皇すなおの家に行ったらなんだかんだで偽の恋人を演じる羽目になり、裸で一緒に布団の中に入ってセックスするフリをしているうちにおかしなことになってしまう話。話自体はバカバカしいけれどそれなりに理由があったから素直に楽しめたのだと思う。

体操着が割と出てくるのが個人的にはとても良かった。あんまり詳しくは言わないけれど、この作品に出てくるさまざまなエロの趣向が所々自分にピンポイントで刺さって楽しめた。

気になる部分も多いけれど、良いと思える部分だけ楽しめる自信があれば読んでみるといいと思う。

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