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フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術師~ DX

開発:ガスト 発売:コーエーテクモゲームス

まあまあ(10点)
2022年3月5日
ひっちぃ

岩山をくり抜いたような鉱山の村エルトナで生まれ育った少女フィリスにとって、外の世界はあこがれだった。村にやってきた錬金術師ソフィーに錬金術の手ほどきを受けたフィリスは、一年以内に錬金術師の公認試験に受かれば好きに生きてよいと言われ、姉のリアーネとともに錬金術師の街ライゼンベルグへと旅に出る。ガストによる人気ファンタジーRPGアトリエシリーズのうち、不思議シリーズの二作目。

アトリエシリーズの良作を選んできっちり三部作全部やろうと思ってまとめ買いし、一作目の「ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術師~ DX」がまあまあ面白かったので、順当に二作目を遊んでみた。おもしろかった。

前作は街を拠点にいろんなところに採取に出かけては帰ってくるのを繰り返したのだけど、今回は旅ということでどんどん移動する。じゃあアトリエはどうすんのって話だけど、師匠のソフィーから中が四次元空間(!)になっている移動式テント型アトリエをもらうのだった。マップ上にあるたき火を選択するとアトリエを設営でき、錬金術の調合をしたりベッドで寝たりセーブやロードしたりできる。

今回の主人公フィリスは妹キャラで、よくある生意気なタイプの妹ではなく、お姉ちゃんにべったりな正統派の(?)妹だった。自分は最初こういうキャラは好きになれそうになかったけれど、この一作をやるうちにすっかりこのフィリスに魅せられてしまった。姉に頼って甘えてみたり、調子に乗って後悔したり、子供扱いされてすねたりと、表情豊かですごくよかった。声が「けいおん!」(原作:かきふらい 制作:京都アニメーション)の主人公の平沢唯にすごく似てるので豊崎愛生がやってるのかと思ったら本渡楓という人だった。

姉のリアーネは妹が大好きな百合っぽいキャラなのだけど、さすがに妹に嫌われたくないので自重している。狩人みたいで弓を使う。職業上、たびたび村の外に出るので、フィリスの旅のアドバイザーとなる。ちなみにフィリスは鉱石の声を聞くことができるという特殊な力を持っているので村から鉱山関連の仕事につくよう言われている模様。

フィールド画面は前作ではガッカリしたのだけど、今回は慣れたせいなのかほとんど気にならなかった。実際良くなっていると思う。ちゃんと歩いている感じがするし、モーションもスムーズでモデリングもかわいかった。ちょっと感動したのは、時間の経過で日が落ちるときに山とか雲の影がダイナミックに動くところ。これは「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」(任天堂)と比べても見事だと思った。

前作はフィールドが非常にコンパクトだったけれど、今回は割と広大になっている。なんと街や村がシームレスにフィールド上に存在している(大都市を除く)。でも家はドアを選択すると別画面になる。途中の街や村には寄らなくてもいいのだけど、今回は試験を受けるために3人の公認錬金術師から推薦状を1枚ずつもらう必要があり、最低でもいくつかの街や村に立ち寄ってクエストをこなして認めてもらう必要がある。

フィールドは一本道じゃないので自由度が高くていいのだけど、普通にやっているとスルーしてしまう場所もそこそこ出てくる。今回、試験までは一年間という時間制限があるため、むやみに寄り道ができないようになっている。総当たりで進んでしまいがちなJRPGの問題を回避していて良いと思う。寄り道してもエリアによっては敵が強くて進めなかったりする。一方で自分の場合、時間制限を強く意識しすぎて先へ先へ行くことに気が行ってしまったため、新しい場所を存分には楽しめなかった。旅がモチーフなのにもったいないことだと思う。プレイしたいまなら分かるけれど、割と余裕があるので慌てなくてよかった。

せっかく旅といういいテーマを選んでいるのに、故郷を離れてはるばるこんなところまで来ました的な感慨がほとんどなかった。ロードムービー的な演出があったら良かったのになと思う。「グランディア」(ゲームアーツ)なんか最高だったなあ、たき火を囲んでキャラ同士が語り合うシーンとかあって。一方で、ソフィーがフィリスたちと途中で別れようとする場面は人生の無常を感じさせて良かった。

戦闘画面は割と相変わらずいまいちだったけれど、細かい点は良くなっていてさすがに前作の同人ゲームっぽさからは脱却している(と思う)。コマンド待機中のモーションが突っ立っているんじゃなくてもっと脈動していたらとか、カーソルがソリッドすぎるのでメタ感のあるエフェクトがついていたらとか、素人目にもまだまだ改善の余地が目立った。魔法とかスキルのエフェクトは爽快感があって良かった。

仲間として最初に出会うのが同年代の錬金術師の少女イルメリアことイルちゃんで、代々優れた錬金術師を輩出してきた名門一族の一員なのだけど、自分の能力に自信がなくて家を飛び出してきている。自分に言い聞かせるように自らを天才と称する不敵さがかわいくもありせつなくもあるといういいキャラ。フィリスとの友情もよかった。

前作に引き続いて植物マニアのオスカーも登場する。すごい痩せてる。さすがにふとっちょは絵的によくないと思ったのか。オスカーのストーリーは拾った植物に絡むかなりせつない話で、それほど出来はよくないけれど涙腺が緩んだ。

今回、キャラごとのストーリーは一緒に行動していないと進まないようになっている。旅先で出会ったキャラは、仲間になるとまず行く先々の酒場や宿に登場するようになる。ここで会話して行動を共にすることを選択すると、そのキャラがアトリエに常駐することになり、メニュー画面の一覧にも表示されるようになる。この中から今回は4人パーティなので隊列に選ぶと戦闘に参加してくれる。

アトリエにいるキャラに話しかけると友好度その他もろもろの条件によりキャラごとのストーリーが進むようになっているので、前作のように街を駆け回らなくていいぶん楽にはなっている。でも自分は最初この趣向に気づかなかったので、試験を受け終わるまでキャラごとのイベントがほとんど進まなかった。いちおうアトリエにいるときに話しかけなくても発生するイベントもあるのだけど(特定の仲間同士がアトリエにいるときだけ発生するイベントがこのパターン)、基本的にはちゃんと話しかけないとダメなので注意。

仲間は他に、とにかく強さを求め続ける一方で料理が得意な変わり者の剣士レヴィ、方向音痴な脚本家のお姉さんドロッセル、女性が苦手な歴史家カルド、歴戦の傭兵だけど意外な目的のために金にがめついアングリフ、部族のしきたりで強いペットを探している少年ハインツ(本来は別売りのDLCだけどDXには全部入っている)、フルプレートを着こんだ力持ちだけど極度に人見知りの女騎士見習いシャノン(DLC)がいる。キャラストーリーはどれもそれなりにおもしろい。ハインツはお子様フィリスにちょっとだけ恋愛を意識させる選択肢もあるのでそういうのが好きならにんまりできると思う。

そうそう前作の主人公であるソフィーもあとあとプラフタとともに仲間に入る。前作のキャラはほかにも何人か登場するけれど仲間にはならない。イベントはいろいろあってどれもよかった。自分は未プレイなのでよく知らないのだけど、エスカとロジーはシリーズ15作目の主人公キャラでもあるみたいだった。時間をさかのぼっているっぽい。こういうちょっとした出演が過去作への興味を誘うのはうまいと思う。グラその他がヘボそうなのでリメイクに期待したいんだけど。

公認錬金術師の試験に合格するといったんエンディングロールが流れてクリア(?)となる。でもフィリスは、今後自分がどのように生きていくのか決めかねていた。要するに人生の旅の目的地を決めることが残っているのだった。これすごくいいと思った。というわけで裏面(?)が始まる。主要キャラの友好度を上げてクエストを進めていくと、キャラごとのエンディングが用意されている。条件を満たしてから故郷エルトナの入口の門で生き方を決めることが出来るので、今回はエンディングの回収(?)が簡単になっている。

自分は大体180時間ぐらい遊んだ。なんでこんなに時間がかかったのかというと、色々と調合した時間が長かったからだと思う。調合の第一歩は目当てのアイテムを作ることで、その次が目当ての特性をつけること。良い特性をつけないと装備やアイテムの効果がいまいちだから。さらにその次が品質を上げることで、特性の効果が上がる(装備はプラフタ用の武器を除いて品質に影響されないらしいので品質により効果が高くなるのはアイテムのみ)。ここまでやらなくてもクリアはできるけれど、サブクエストを全部完了するには強いアイテムが必要となる。調合は割と面白いのですぐに時間が経ってしまうけれど、人によっては面倒に感じると思うし、考え方が分からなければいつまでたってもいいアイテムが作れないと思う。わからなかったら攻略サイトを見てみよう。

前作にあった「一撃必殺」という雑魚敵を即死させる凶悪な特性が弱体化された。自分より明らかにレベルの低い敵にしか効かなくなった。前作はこれのおかげで雑魚戦が楽勝かつ経験値ガッポリだったのですぐにレベルがカンストした。今回は公認試験合格後に各所にあらわれる高レベルの割に弱いユニークモンスターを倒すと経験値を割と楽に稼ぐことが出来るけれど、時間が掛かるしカンストが遠いしある程度レベルが上がるともらえる経験値が下がるらしいので地道にかつ敵を変えていく必要があるみたいだった。自分はレベル71ぐらいまで育てたら大体のボス敵を倒せるようになったのでここまででやめた。でもDLCで追加されたエリアの雑魚敵やボスには全然勝てなかった。

調合のシステムは前作と比べて基本的な部分は同じだけど細かいところで洗練された。前作にあったいろんな(ややこしい)釜がなくなり、代わりに触媒によって枠の性質が変わるようになった(触媒なのにアイテムを消費してしまうけど)。前作では材料を効果的に配置して属性を高めていくというシステムが分かりにくかったと思うのだけど、今回は枠(釜)の中に配置されている同じ形のマーカーすべてに材料を載せると効果を発揮するという分かりやすいシステムになっている。

自分は結局DLCのサブクエスト以外は全部完了させた。港町フルスハイムの竜巻発生の原因をなんとかするのが一番大変だった。先へ進むにしたがって道中の雑魚敵がメチャ強くなるので途中からは逃げてばっかりになった。一方でボスはそこまで強くなかった。相変わらずゲームバランスがおかしい。

まあどこでプレイを終わらせてもそれなりに楽しめるのであまり気にしなくてもいいと思う。先のサブクエストはキャラごとのエンディングとは関係ない公認錬金術師レンさんがらみのクエストということになっているのでやらなくても全然問題ない。レンさんは真面目で性格のキツいアラサーの美女なので、彼女の喜ぶ顔が見たければがんばってみよう。

前作は正直人に勧めづらいほど完成度が低かったけれど、今回はようやく人に紹介できるぐらいの出来になっていると思う。でも前作と緩やかにつながっているのでいきなりこの二作目を勧めるのもどうかと思ってしまう。たぶん前作をやっていなくても大したことないと思うけれど、前作をやっていなくても大丈夫だよ!と言うのはちょっとためらってしまう。

ほのぼのしたJRPGをやりたくて、かつ錬金術の調合というシステムをあまり面倒がらずに楽しめそうな人ならプレイしてみてもいいと思う。

(最終更新日: 2022年6月29日 by ひっちぃ)

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